「日本三大怪魚」
西日本太平洋側の「アカメ」
琵琶湖・淀川水系の「ビワコオオナマズ」
そして北海道の「イトウ」
本格的な渓流ルアーフィッシングを初めたのが2022年の5月。
ずっと憧れ、畏怖すらも抱いていた魚。
魚へんに鬼と書かれる魚。
それに初挑戦をする。
前置きとなるが、北海道の渓流ルアーフィッシングにおいては、ヒキも強くパワフルなファイトを見せてくれてなおかつサイズも大きくなりやすいニジマスや、極めて大きくなり支笏湖においてはシコブラと呼ばれるブラウントラウトの外来種の2種をメインで狙う方が多いと思う。
その2種に比べると在来種であるイトウは朱鞠内湖や猿払川はポイントとして特に有名でアングラーも多い。ただそれらの聖地と呼ばれるところではなく渓流で釣ってみたいという気持ちが強くあり、今回は川で狙う事となった。
今回も同行してくれたのは渓流ルアーフィッシングの師匠でもあるSHINGO@年中釣者(@nenjyu_shingo)
恐らく居るであろうポイントを選定し夜間から車を走らせる。
車をしばらく走らせポイントに到着し心を落ち着かせて準備。
まだ薄暗い川へ立ち込みすっかりと慣れたものでテンポ良く探っていく。
水量は多くはない。水色はささ濁り。コンディションは良さそうだ。早々に30cmちょいのニジマスが釣れてくれたがその後は反応薄。
条件は良さそうなだけに「なんでかな~」と首を傾げながらのんびりと歩いていると、鹿でも熊でもない足跡。明らかに人間で恐らく昨日の足跡。こればっかりは仕方がないので竿抜けしているであろうポイントをあの手この手を変え探り続ける。
そうしながら二人で30cm前後のニジマスをポツポツ釣りながら釣り上がり、いよいよ辿り着いた大場所。手前も岩盤でしっかりと掘れておりそこを丹念に探りながら、大場所にはまずSHINGOがトライ。
「きたっ!」と声が響きしなやかなロッドが根本まで曲がる。
上がってきたのは見事なサイズのアメマス。50cmは超えている。サイズも当然嬉しいが何よりもキレイな魚体。思わず二人から笑顔が零れる。
写真撮影に励むSHINGOを横目にそのポイントにキャスト。タダ巻きするとすぐにヒット。ロッドがぐわんぐわんと曲がりファイトでこれもアメマスだと確信。
久しぶりの良型にワクワクしながらランディングするとこれも同じく50cmオーバーのアメマスだ。
ただしこの子はネットの中でフックを外すと写真撮影NGだった様で元気よく跳ねて川にお帰りになってしまった…。川で釣ったアメマスの記録更新魚であったのでとても残念。
気を取り直して再度キャスト。
これは完全に私のイメージではあるのだが、イトウは流れが淀んでいる所に多いイメージ。流れはしっかりとあるのだけれども、渓流というよりは水流の音も静かなところから水際でエサを丸呑みしている。
そのイメージでこのポイントで居るとするならば表層を流れる流心の下で水が落ち着いているところ。
まずはそこに巻きで探れるSMITHのDインサイトを投げ入れ、しっかり沈み込ませてから緩めのトゥイッチを入れて平打ちでアピールをする。
3投ほど試すも異常無し。
平打ちのアクションで反応が無いとあれば次は反対のアピール。
取り出したのはウォーターランドのジャークソニック65ヤマメ
65mmでオールラウンドなミノー。6.5gのヘビーシンキングで有りながらルアー下部の平面で水を受け弱々しく震えながらシミーフォールしていくミノーだ。
これを流心に魚がいるだろうポイントを超えた辺りにアップで投げ、5カウント沈める。そこからはそこそこ水量のあるところにアップで投げ入れているのでリフトアンドフォールするような形でしっかりメンディングしながらも、リップに水を噛ませつつ、シミーフォールで魅せていく。
それを続ける。
プルプルと弱った魚のように震えながら落ちていくミノー。
フォール中に流された分のラインを軽くメンディングしてふわっと持ち上げる。
持ち上げようとすると流木に刺さったかの様な重み。
もはや反射的にフッキング!
が、
動かない。
「沈めすぎて根掛かり?」
そう感じてフッキングしてしなったロッドを不思議そうに見つめていると、突然暴れ出すティップ。
そのまま暴れ出し列車の様にグングンとドラグ音を響かせながら、お構いなしに進んでいく。かなりでかい「何か」が掛かったのは間違いない。ファイト的にニジマスではないしアメマスっぽいと感じながらロッドはバッドまでぶち曲がり明らかにロッド以外のフックやスナップ、そしてラインへの負荷が大きく掛かり過ぎているのでドラグを緩める。
「何か」の走りがある程度落ち着いてからは強烈な首振り。
5.4ftのカーディフNXの竿先はテンションがまるで掛かっていないかの様な状態かと思いきや突然バッドまで振り出し、経験したことのない首振り幅に戸惑いが隠せない。まるで1mの魚でも掛かったのではないかと思う振り幅に「首振りヤバイんだけど!」と語彙力ゼロの言葉でSHINGOに叫ぶ。
SHINGO「めちゃくちゃ首振ってんじゃん!!!」
と魚が掛かったことに気付くと遠くから応援してくれる。
その後は、首振りが止まったと思い少しずつ魚を寄せて来ると、暴走列車の様にドラグを響かせながら進んでいく魚。そして落ち着いたかと思うと激しい首振り。
それを何度も何度も繰り返し、
寄ってきたのは銀色に斑点の魚体。
「イトウだ!」
私が叫ぶとSHINGOは ”ずざざざざざざ!!!”と崖から飛び降りてきた。
「ウェーダー履いているのに滑り落ちて大丈夫なのか」と「そのまま川に落ちたんじゃないのか」と割とガチで不安になったのだが、もう全然振り向く余裕はなかった。
そのまま「イトウだ!イトウだ!でけぇ!!!」と飛び跳ねて喜ぶSHINGO
もうそれどころじゃなくて震えが止まらないRYUGO
魚体が浮いてきたときから震えが止まらなくてランディングも任せたかったのだが、なんせ初めての「幻の魚」と呼ばれるイトウ。
アングラーの中にはイトウをポンポン釣ってる方もいらっしゃるのだが、幼少期から当然ながら認識していて、渓流ルアーフィッシングを初める前からずっと憧れ、ようやくしっかりと狙えるようになった魚。
その魚体が、この柔らかい竿と、細い糸、小さいスナップとフック、こんな魚を釣り上げるようには考えられていないような装備で挑み、その憧れていた魚が目の前に浮いてきているのだ。
そうして自分でランディングする事を心に決め、まずは冷静にドラグを緩める。
自分でネットを左手で持ち、イトウを寄せる。
何度ネットを見られてドラグを出されながら逃げられただろう。その度にネットを手放し、リールを巻きなおし魚を寄せる。冷静に。
恐らく5度ほど繰り返した。
そうして………
疲れ果ててくれたのか、よくやくネットイン。
そのままネットから零れ落ちそうだ。
「やったやった!」と喜んでいるSHINGOとは裏腹にまだ心拍数が落ち着かず動けないまま、とりあえずプールになっているところに移動するも足が震えている。
そうしてプールにイトウを浸けてネットを手放す。
そしてSHINGOと無言で激し目のハイタッチ。
そうしてやっと「やったぁぁぁぁああああ!!!」と声を出すことができた。
いつの間にか上がっていた呼吸を整えてからイトウに付いていたフックを外す。
フックはしっかりと刺さっていたが既に歪んでおり、スナップも伸びて破壊されていた。まだ流れが淀んでいるところであったのでキャッチする事が出来たが、もう少し流れが強く、流れに乗ってしまうとバラしていただろう。
フックを外し震える手を抑えながらメジャーを出しサイズを測る。
【65cm】
この河川でこのサイズ、そして初めてのイトウ。文句無しだ。
「イトウを釣ってみたい!」とナビをお願い。
— 中川りゅーご🎣北海道の釣りブロガー (@higeryugo) 2022年9月21日
初めてにしてはできすぎのイトウ。
久しぶりに手が震える魚に出逢えました。
良い魚との一期一会に感謝🥺
これだから釣りは辞められない!
大事そうに赤ちゃんみたいに抱える写真がなんかツボ😂 pic.twitter.com/gJ1IoxV0cE
未だに落ち着かない感動の余韻を味わいながらもう少し水深が取れるところに岩を並べてプールを作り、そこにイトウを離し体力の回復を待つ。
10分程度そのまま放置して、イトウを掴みリリース。渓魚と言えばリリースシーンのムービーが格好いい。それを撮りたくてSHINGOにスマホを渡し撮影開始。
…………するも、しっかりと蘇生し元気になりすぎたせいか、手を離した瞬間から物凄い勢いで逃げられてしまい格好いいリリースシーンの撮影とはならなかった。
しかししっかりと元気にリリースできたから良しとしよう!ありがとう!!!
しっかり蘇生しすぎてリリースシーンの撮影はできませんでした笑 pic.twitter.com/rAB7rMqZ0b
— 中川りゅーご🎣北海道の釣りブロガー (@higeryugo) 2022年9月22日
引き続き釣りをしているSHINGOを横目にすっかりと満足し、のんびりと休憩。
イトウを記念撮影したり何やらとやっていたせいですっかりとビチャビチャになり、ウェーディングジャケットはイトウでヌルヌルになっていた。
そして濡れたままなので当然ながら物凄く寒くなってきた。
太陽は日を指し気温は上がるも身体は震えていた。
これは釣り上げた喜びの震えなのだろう。
久しぶりに感動する魚と出逢うことができた。
仲間と自然。巡り合わせてくれた全てに感謝。
プロフィールが釣り人っぽくなりました🎣#新しいプロフィール画像 pic.twitter.com/PKaHIwuomd
— 中川りゅーご🎣北海道の釣りブロガー (@higeryugo) 2022年9月22日
【釣果】
イトウ65cm
■使用タックルデータ
ロッド:カーディフNX s54ul
リール:ヴァンフォード C2500SHG
ライン:PE0.6号/フロロ10LB
ルアー:ジャークソニック65 ヤマメ