70cm5.6kgの海サクラマス。
数年前までは60cm3kgを超えれば十分に【板鱒】と呼べるサイズであったが、それを遥かに超えてしまう魚体。
様々な要因があるにせよ「網には5kgも掛かるらしい」と噂レベルでしか聞いたことのない魚体を釣り上げてしまった記憶を記録として残して置こうと思い、
死ぬほど思い腰を上げてブログに残します。
Windyを見つめて明日のポイントを選ぶ、もはやこれは4月に入ると毎日行っているルーティン。「明日の場所どうしようかな…」と選んでいる時が一番楽しいまである!
2024年は周りの情報に踊らされず、自らが見て得た情報と経験則で決めていて今のところそれは当たっていた。そんなこんなで決めたポイントは結局不人気で人が入らないであろうポイント。
そんなポイントなので余裕をかまして未明までぐっすり寝て朝マズメ1時間前に間に合う様に車へ乗り込み、コンビニに寄りエナジードリンクを飲みながらハンドルを握る。
到着するとやはり釣り人らしき車はゼロ。逸る気持ちを抑えて忘れ物をしないようにしてやや明るくなった磯へエントリー。
ライトを頼りに磯を歩いていざ立ち位置に到着すると…
完全なる無風、そして完全なるベタ凪。
「うわぁ…やっちまったぁ……」
思わず声が漏れてしまう程の凪。
私はベタ凪の日に釣果に恵まれたことが少なくどうしてもそれにいい思い出はない。
特にここの磯は潮通しも良く濁りが入ることもほぼ無く、澄み潮・ベタ凪・無風となれば魚に口を使わせるのは難しいコンディションとなってしまう。
まぁ釣りをする上で気持ち良さは格別なんだけど………
そんな感じであまり期待せずに気持ちの良い磯を楽しもうと気持ちを切り替え、のんびりと準備。
ガイドに糸を通しスナップをダブルクリンチノットで結ぶ。飲み物やストリンガー、ルアーケースを岩の上に置き腰痛対策もバッチリ。 ←これ大事
ルアーはまずコレ。
これは良く飛び程よい浮遊感も有りスローに引ける、まだ暗い内のパイロットルアーの一つだ。
そして何よりシマノのジェットブーストは本当に優秀だと感じていて、移動重心ではナンバーワンだと思っている。
初めから飛行姿勢が決まった時は他メーカーのルアーも同様に空を切り裂いて行くが、ルアーが放物線の頂点に達し下降を始めるときからのひと伸びが違うと感じている。
これはジェットブーストは他メーカーがマグネット式や物理的にウェイトを移動する物が多い中シマノはバネ式を採用しており、放物線の頂点に達し慣性が落ちてきた頃にルアー内部の後方に移動していたウェイトがフロントへ戻ろうとする力が働き、それでいわゆる「最後のひと伸び」が産まれるらしい。
どこかでそういう記事を見たのだが…出展はどこか見つけられない………
誰かその記事見つけたら教えてください!!!
と、脱線してしまったがかっ飛ばしながらスローに表層をサーチ。
「この間に釣れてくれたら気持ちが楽なんだけどな」とやや明るくなってきた海面を眺めていると足元でキラキラがピチャピチャ。
明かりを照らし凝視してみるとカタクチイワシっぽいベイトが海面で騒がしくしている。その様子を見て先ほどまでの暢気に海を楽しむ気持ちはどこかへ飛び、頭をフル回転させて状況を確認する。
「確実にチャンスはある」そう感じ、ベイトが目の前に居るので近距離戦で勝負すべく早々にルアーチェンジ。
ルアーは鉄板のアスリート14ssカタクチ。もはや説明不要だろう。
逸る気持ちを抑えてロッドで空を切る。まだ目の前に感じるベイトの存在を感じつつ振り続けているが思いの外、反応がない。
ベイトを追って岸寄りしていればすぐにでも掛かるはず…と思っていたのだがそう甘くはない。
そうこうしている内に海面は更に明るくなりだし見渡せるようになってきた。そして見えてきたのは一面にいるベイト。
足元だけではなくそこら一面で海面でピチャピチャしているではないか。
これだけベイトが居ると逆に苦戦してしまうかもしれないと思いつつ、次の一手を考えながらも決まらず、とりあえずそのままミノーをキャストし続ける。
この状況の最適解を考えつつ………と海面を見ているとかなり遠くでドデカい銀ピカな魚体が海面から飛び出しているではないか。
「でけぇ!」と思わず声を上げてしまうサイズ。
大慌てでルアーを回収し目測約90mなのでメタルジグを手に取る。
選んだルアーはルアーズケミストのディアン。私の手持ちのルアーでは最も飛距離が出るルアーだ。そうしている間にも変わらず魚は同じところで跳ねており確実にチャンス!
いざキャストをすると跳ねた位置よりも更に奥に飛び飛距離的には問題なし。後はディアンを信じて鉛の塊を小魚へ変貌させるだけだ。
…だが、ベイトが多すぎるせいなのか、食い気がなく跳ねているだけなのか反応がない。十投程して次の一手を考えるもどうして良いか分からず頭の中がぐるぐるする。
一先ず気持ちを落ち着かせるのにルアーを回収。そしてルアーボックスをチェック。
現時点で求められているのはまず第一に約90mは飛ばさなければならないこと。そしてベイトで溢れている中でルアーを魚に見つけて貰うこと。
それを満たしているルアーは数少ない。そんな中目に入ったのがDUELのモンスターショット95s シルバーフラッシュ。
私はメタルジグを使う際はシングルフックの段差フックを使っているため、基本的にアクションをするとテーリング(フックがラインに引っ掛かる)してしまうため、タダ巻きで誘っているが、これはトレブルフックの為アクションを付ける事も可能だ。
飛距離はメタルジグには少し及ばないが魚が居るであろう約90m先までかっ飛ばし、ラインスラックを回収。
そしてその間に少し沈んでしまっている為、ルアーを表層に戻すこと。またフラッシングで魚に気づかせること、ラインメンディングをする事。これらの意味を踏まえてワンピッチジャークを5回繰り返す。
そしてルアーがクルクルと回らない速度の速巻きで魚が居るであろう所を通す。
サクラマスはキラキラとフラッシングするモンスターショットに気付き興味本位で近づいてくる。そして2m/sの速度で逃げる光る何かを好奇心でやや距離を空けて追尾する。
何か分からずそれを5秒ほど追尾しているとその何かは疲れて来たのか徐々にスピードが落とし気がついたら目の前に。
何か分からぬまま追いついてしまったそれに思わず口でがぶっと食いついてしまう。
「来たっ!!!」
ロッドを通して伝わるもの凄い重量感。
私が使っているロッドが良く曲がることもあるがバット部分まで曲がりかけてしなやかな放物線を描いている。
そしてその重量感から掛かったのはあの跳ねてドデカいサクラマスだ。そう感じつつ良いところにフッキングされていることを祈り、キツめに締めているドラグを少し緩める。
いざファイトが始まるとサクラマスとは思えない重量感。だが、全く走らない。
「もしかしてアメマス?」と嫌な気配も感じつつも、昨年釣った5.2kgも全く走らなったことを思い出し、サクラマスの口へ無駄な力が掛からぬ様にポンピングはせず慎重にリールファイトをする。
かなり遠くで掛かった為、寄せるのに時間は掛かったが少しずつ寄ってくる魚体。
ランディングネットを準備してランディングに備えた立ち位置に移動する。
だが、
それから待ち受けていたのは前回同様にネットを見た途端に本気を出すサクラマス。
一度目のランディングチャレンジは失敗に終わる。
そしてドラグが壊れたかに思うほど猛烈に走り出し約20m沖に戻っていく。
それからはまた負荷を掛けぬようにロッドの弾性だけを使いリールファイトでドラグはチリチリと出るくらいにしてゆっくりと寄せていく作業。
寄せては逃げるを繰り返すこと三度。
また同じ様にネットを見て逃げ出し走り出すが確実に初めよりは走る距離が短い。
そしてそこからまるでアメマスの様にロッドがグワングワンとなりローリングをしている雰囲気、そして手元に伝わるラインが絡む感触。
あまり好ましくはない状況だが、モンスターショットを丸呑みしているのは目視できていたので、ローリングよりボディにラインが絡まればフックが刺さっている箇所への負荷も減らすことができて、かつサクラマスの泳ぎも抑える事が出来るだろうと考えたので、内心助かったと思っていた。
そして案の定ローリングによりラインが絡まったサクラマスは先ほどとは打って変わってスイスイと寄ってきて、何よりも緊張するセルフランディングも成功。
心臓の鼓動を感じながらうっすら水が溜まっている潮溜まりにネットを降ろす。
「やっちまった………」
一目で分かるその魚体の大きさ。
2023年は5.2kgのサクラマスを釣り上げており宝くじに当選した気分でいた。
そして「今年も5kg釣れたらいいな~」とぼんやりと思っていたらシーズン早々に釣り上げてしまった。
あまりの大きさに手足まで震えた。
スマートフォンの不具合により目が生きている写真が残って居なかったのが非常に残念だが…。(今までもなぜか撮ったはずの画像が保存されていないことがあったのでその後すぐスマートフォンは変えた)
もうこの時点で満足して帰ろうかと思っていたのだが、変わらずベタ凪の海ではまだ魚は跳ねている状況。
心を落ち着かせ足の震えが収まった頃に再びキャストを開始する。
その後もベイトが跳ね続けている状況で、続けて4.2kgと3.6kgをキャッチ。
こんな恐ろしい日があるものかと思いつつ、その日はそれにて終了。
魚のサイズは選べない、というのが私の持論でもあるのでこればかりは運としか言いようがない。
だが前回の5.2kgはミノーをベリーフックまで丸呑みしていた。そして今回はモンスターショットを丸呑み。
フックの掛かりどころも魚次第なのが釣りの難しいところの一つではあるが、やはり大型を取るためにはジャーキングをせずにタダ巻きで飲み込ませる。といった一つの仮定がまたほんの僅かに立証されたのかもしれない。
それとファイトから見ても分かるようにサクラマスは4kgを超えて来ると走り回るような動きはやや苦手に感じている。実際ファイトで走り回る楽しいファイトをしてくれるのは3kg~4kgが多いと思う。
そのため、ジャーキング等の激しい動きには4kg未満のサクラマスの反応が多いのではないか?というのが私の仮説。決して「激しい動きに大型の反応が悪い」のではないというのは伝えておきたい。
そしてこれはあくまで私の仮説でしかないし、まだまだ立証するにも検証の数が少ない。
そして何より「こうすれば釣れる!」という絶対が無いのが自然を相手にする釣りの楽しさだと思う。仮定を考えるのは好きなので自分の頭で色々と考えつつそれをその不確定さを引き続き楽しんでいきたい、そう思う。
最後に語ってしまい叩かれるのが怖いが、本当に釣りは楽しい。
こんなオッサンになっても手足が震えるような感動を味わえる体験はなかなか無いだろう。
全てはどうあがいても人間にはコントロールしきれないこの畏怖すべき自然相手
そしてそれに少年のように心躍らせながらも立ち向かい、まるで宝石のような美しい魚体をモノにする
ある種太古からの人間の狩猟本能をくすぶる体験なのだろう
こんな感動を味わってしまうと、釣りは止められそうにないね。
【釣果】
サクラマス ×3