真冬に悪い釣り仲間に教えられすっかりと虜になっている湖でのルアーフィッシング。
海はまさに大自然。果てしなく続く水平線と荒々しい波。人間は自然には勝てないということを教えられる。(特に釣れない時)
湖は対照的な存在。静寂。何かを捕食したのか身に付く寄生虫を振り払ったのか、水面へ飛び出し波紋を拡げるその音もうっすら見える距離ですらも耳に入ってくる。
そして大海とは異なりこの見える範囲に広がる水面のどこかに、必ず存在している80㎝オーバーのモンスタートラウト。この湖面でスプーンをキャストする度に最早それは「釣りたい!」という憧れの対象ではなく「釣れたらどうしよう」と畏怖の対象にさえなっている。
そんなモンスタートラウトに出逢うべくとうとう迎えた6月1日。そうこの日は洞爺湖における漁の解禁日。
湧き上がる興奮に身を任せ深夜0時へ出発し洞爺湖町へ到着したのは深夜2時頃。狙いを定めていたポイントへ近づくと同じ様に虜になったアングラーの車で溢れていた。
駐車場が空いているかとても不安になるが狙っていたポイントには車は無し。安堵し真っ暗の内からイソイソと準備をする。
準備を終えウェーダーの腰まで水に漬かりながらポイントを目指す。周りから聞こえる音はジャバジャバとした誰かが水を漕ぐ音と、高音でなる鈴の音。これだけ鈴の音が聞こえるとお腹を空かしたヒグマも近寄りはしないだろう。
そうこうして真っ暗な内にポイントへ到着。こればかりは経験しなければ分からないが、本当に静か。静寂という本当の意味を知ることができる。そして日頃生活している街がどれだけ音に溢れているかを改めて感じる。
静かに癒しを感じながらもすぐにルアーをキャストしたい気持ちが抑えられなくなるが、漁の解禁は朝4時から。明るくなりつつある自然を愉しむ事にした。
そうして3時間に感じた4時までの1時間が過ぎとうとう解禁を迎えた。
使うのは湖のルアーフィッシングではメジャーなルアーであるスプーン。しかし通常のスプーンとは異なり所謂スライドスプーンと言われるもの。
こちらのシーレーベルのプロビア28g。サイズと色は一通り揃えている。
これはただ巻きのリトリーブでは通常のスプーンの様にヒラヒラと舞いながら動くが、特筆すべきリトリーブをしていない時のフォールの仕方。
カーブフォール時はそのスライドスプーンという名の通り巻いていた方向とは異なり、クルクルと回転しながら横へスライドする特徴的なスプーンだ。そしてフリーフォールでもどちらかにクルクルと周りながら落ちていく。
余談になるがこのスプーンはホッケを釣る際にも良く釣れる。メタルジグでは食いが渋い時にこのスプーンでストップ&ゴーをするだけで面白いように釣れる。そして飛距離もメタルジグ程ではないが良く飛ぶのでかなり万能なルアーだ。リトリーブもゆっくり巻いてもしっかり泳ぎ、フォールもゆっくりと落ちていくのでかなりオススメできる。また海サクラマスも周りがミノーやメタルジグを投げて釣れない中、これで一本キャッチしている。
この信頼するスプーンを暗い内から見えていた魚が跳ねる方向へ全力でキャスト。スライドスプーンはゆっくりとフォールを始める。
フォール中にアタリが出る事も多いためラインを指で押さえるフェザーリングをしながら着底までのカウントを取る。
15カウントしたところで一瞬「コツン」と竿先が持って行かれる。まさかと思いリールのスプールを起こしフッキング。
そうすると竿先には心地よい重量感と小気味よいヒキ。まさかの一投目でのヒットに思わず笑みが零れる。
口が柔らかいのでゆっくりと楽しみながら巻き上げる。そうして魚を傷付けぬ様にランディングネットに迎え入れたのは30㎝程のチップ(姫鱒)だった。
こうして見ると本当に綺麗。姫鱒という名前の由来には諸説ある様だがお姫様の様に美しいという意味でも姫なのではと感じてしまう。ちなみにチップという名は語源はアイヌ語で「魚」を意味するチェプというのが訛ったものらしい。
この洞爺湖のチップ。とても美味らしく近隣の旅館やレストランでは姫鱒の定食を売りにしている所が多い。浮袋線虫というそれはまぁ気持ち悪い虫に寄生されている事が多いが一度食べてみたいとは思っている。
しかし今日は解禁日、周りの人も多い。特にトラウトは海で行う「魚を釣り持ち帰って食べる」という釣りとは異なり、「フィッシング」というどちらかというとゴルフやテニスの様な欧州から持ち込まれた紳士のスポーツの一種と捉える人が多く、キャッチ&リリースがメインである。
その「釣り及びフィッシング」という考え方に対してはもはや宗教論だと感じているので他人に口を出す気はないが、私はどちらかと言うと「命で遊んでいる」事には変わりないと考えているし、キャッチ&リリースをしても延命率は下がる。そして食べる事も供養だと考えているので基本的には食べる。
が、何度も言うが今日は人が多い解禁日。湖のルアーフィッシングにおいて私の様な考え方は少数派なので今日はリリースする事にした。歓びをありがとう。そしていつかは美味しく頂いてやるぜ。
私のしょうもない釣りに対しての考え方を披露した(炎上コワイ)ところで、再び同じルアーをキャストし始める。ボトムまでカウントしながら沈め、ストップ&ゴーでゆっくり上げつつ沖のブレイクラインのスレスレを通るイメージ。
釣り上げてから5投目。5回ゆっくり巻いて1秒止めゆっくりと巻き始める。そして巻き初めた直後にまたココンと小さいアタリ。フッキングとまで言えない様なアタリに合わせて優しくアワセると1度目と同じ様なヒキ。上がってきたのも同じくらいのチップだった。
グリーンのパターンがハマっていたのか場所が良かったのか、周りでは釣れている様子は無かったがアタリが頻発。3匹目も追加したところで徐々に渋くなってきたのかアタリはあるが乗らない事が増えてきた。
サイズが小さいと喰ってくるかと思い、同じカラーのプロビアのもっと軽い物を試してみるがそうするとアタリが無くなる。
28gの大きいシルエットが良かったのか、元に戻すとまたアタリが出る。が、喰わない。
そうこうしている間にしっかりと陽も登り時間は8時半頃。十分に癒され満足もしたのでこれで帰路へ付く事とした。しかし某SNSを見ると70㎝オーバーを釣っている方が居た。やはりロマンがある。
さて、久しぶりの湖での釣りとなったが、やはり海とは異なる癒やしとロマンがある。
私も湖でのルアーフィッシングを教わるまで、過去に渓流釣りは良くしていたが小川の対岸から出てきた熊に遭遇してからは淡水での釣りは控えていた。
釣りは海がメインで淡水に興味が無い方も沢山いらっしゃると思う。また興味があっても「敷居が高そう」といったイメージを持っている方は多いと思う。
確かに淡水でのルアーフィッシングは上記の通り「釣り」とは異なり「フィッシング」という紳士のスポーツの色が強い。例えばフックはシングルフックで出来ればバーブレス(カエシ無し)、魚を傷付けない様にラバー製のランディングネット、魚を陸に上げない等。
そういった事を除けば私は基本的に海でのルアーフィッシングと同じタックルで挑んでいる。
タックルは以下の通り
ロッド:シマノ/エンカウンター 96M
メインライン:ピットブル1.2号
ショックリーダー:フロロ16lb
もちろん専用のタックルがあるには楽しいということも含めて越したことはないだろうが、後はルアーを少し買えば良いだけで十分に楽しめる。
既に湖でのフィッシングに勤しんでいる方からするとこれ以上に人は増えて欲しくないという気持ちもあるかもしれないが、私はマナーを守る人が増えてしっかりと遊漁券を購入する事が資源の維持にも繋がると考えている。
今はこういったご時世なので地元にお金を落とす事が難しいが、洞爺湖がある洞爺湖町にお金を落として地域活性化に繋がればと思っている。
海でルアーフィッシングを愉しみ湖や川には興味が無い方。どうか一度検討してみて欲しい。一度は足を運んでみて欲しい。そして海とは異なる自然を味わって欲しい。
眼前のどこかに必ず潜んでいる80cmオーバーのモンスタートラウト。それとの出逢いを求めるロマン。一度知ると病み付きになるよ。
【釣果】
チップ(姫鱒)×3