全く咲かないサクラマス…。
今シーズンは例年に比べて全く釣果報告も上がって来ず、毎年3月となればワクワクが止まらない季節ではあるが、仲間とカレイ釣りを楽しんだり、ナイトロックをしたり、焚き火をしたり、磯カフェをしてみたりと、のんびりとした釣りを楽しんでいた。
釣果報告が上がってきた4月、いよいよ満を持してサクラマスシーズン開幕だと4月5日に聖地・島牧村へ乗り込んだ。
仲間とキャップライトを頼りにポイントへ辿り着き、今シーズンの開花を目指し、ミノーを振り続けると早々にヒット。
今まで感じた事の無い重量感でロッドを支えている腕が限界に近づいてきた頃に波打ち際に上がってきたのは、丸太の様なサクラマス。
竿が折れそうになりながらも左手で支えなんとか砂浜に打ち上げる。
その刹那に外れるルアー。そして引き波で攫われる自己記録更新は間違いないであろうサクラマス…。
心が折られるも悔しさが勝りすぐにリベンジ決行を決意。
その三日後の4月8日に再び、聖地・島牧村へと戻ってきた。
暗い内から仲間とポイントの駐車場へ車を停め僅かな仮眠を取る。
眠たい目を擦りつつ日の出の1時間前、まだ真っ暗な中歩みを進めるとサーフにはたくさんの灯り。
「起きるのが遅かった」と少し後悔しながら辺りをうろつくと、砂浜のサーフの中で他よりも砂利が多く打ち上げられているところを見つけ、そこに座を構える事とした。
周りは真っ暗な内から風切り音を鳴らしていたが、私は太陽の恩恵を受け始めた頃、同じく暗闇の海へルアーを飛ばす事とした。
使用するルアーはエンドウクラフトのDant30グローピンク。これに毎キャスト毎にヘッドライトの灯りを当て蓄光して暗闇の海へと落とす。
手元に伝わる僅かに震えるルアーの動きを感じられるか感じられないかの瀬戸際の速度でリールを回転させる。そして潮や波により不意に泳ぎが破綻しフラっとさせる。
その感覚で丁寧に巻き続ける。
そうして僅か3投目にグンッと突然重くなり、しっかりフッキング!
隣に来た仲間に「なんか来たわ!」と伝えファイトするも、どうもこれは…
最近釣り慣れているアメマスの引き。
「多分アメだなーこれ」と伝えるとガッカリする仲間の顔。いや、気持ちはわかる。
上がってきたのは推定55cmのアメマス。嬉しい気持ちはもちろんあるが、今回の狙いとは異なるのでサイズも測らずに早々にリリース。大きくなって帰ってきておくれ。
変わらずにダントのキャストを続けていると、少しづつ水平線も見えるようになってきた。光量も増えてきた頃に、ルアーをチェンジする。
変えたルアーは当ブログ愛読者であればご存じであろうジャクソン社のAthlete14ssマズメカタクチ。釣具屋で常に売れ余っているような超絶不人気カラーではあるが、私はこれでの実績が本当に多い。信頼しているルアーカラーのコイツをまだ暗い海中で小魚へと変貌させる。
まずは定番のジャークから。
ジャークを潮噛みに合わせて2回~5回入れ、タダ巻き、これも潮噛みに合わせて3~5回程度。この動作を繰り返し、サクラマスの回遊を信じてキャストを続ける。
時間にして約30分。同じアクションを続ける。
皆さんもご存じの通りマス類は頻繁にチェイスをしてくる魚。良く波打ち際まで魚が追い掛けてきて目の前で「プイッ」と反転して帰っていく姿を見かけたことだろう。
それがなんとも悔しいので、私はある一つの事を習慣としている。
それはルアーの回収直前にストップを入れること。
その効果があるかどうか分からずにやっていた習慣にようやく花が咲く事となる。
いつもの様にルアー回収直前にチョンとトゥイッチを入れステイ。
その瞬間
完全に油断していたため竿ごと手首を引っ手繰られ、慌ててロッドを持ち直す。
突然の出来事にかなり驚きつつもしっかりフッキングをして、隣にいる仲間に掛かったことを伝える。
回収直前ではあったがなかなかの重量感でしっかりとドラグを出しながらファーストランで少し沖へ離れる。
明らかに先ほどとは異なる横への走りに「これはサクラだわ!」と伝えると駆け寄ってくる仲間たち。
先日にバラした魚の重量感とは異なり、スイスイと寄って来る魚。
少し物足りなさを感じながらもやはり波打ち際になると粘る。焦らずに少しドラグを緩めランディングを嫌がる事3回。
大きな波に合わせリールのスプールを右の指で軽く抑え、左手はロッドを支え砂浜へと打ち上げる。
そして打ちあがった魚に付いているラインを仲間が引っ張り上げ、無事にランディング成功。先日はそれを一人でやろうとして近寄る前にルアーが外れてしまったので、仲間の存在は本当に有り難い。
無事に釣り上げられたのはなかなかのサイズのサクラマス。
4月8日という例年に比べかなり遅い初物。ようやく釣れた事に安堵する。
仲間全員とハイタッチをして喜びながらもまだ時間は朝マズメ。早々にエラへナイフを入れそのまま袋へ突っ込み砂浜へ埋め。キャストを再開する。
………しかし一匹釣れた事にかなり満足し、心には余裕が。
「あー良かった~」と安堵の声が漏らしつつ、少しづつ色付いて行く釣り人の特権とも言える美しい水平線を眺めていた。
周りの釣果も気にしたが見つけた限り40~50人近くいた中で上がっていたのは6本程度。どうやら私は相当に運が良かったようだ。
そしてしっかりと明るくなった頃にはすっかりと釣り上げる人も居なくなり、撤退する事とした。
先ほど釣ったサクラマスを改めて計測する。
【59cm 2910g】
な、なんとも絶妙なサイズ…。
これが60cm 3kgであればもう堂々と胸を張れるサイズなのだが…。
改めて写真を見返すともしかしたら魚をしっかり伸ばし、血抜きをする前であれば60cm 3kgであったかもしれないが、またこれより大きいサイズを釣り上げれば良いので良しとしよう!
私が釣り上げたことに安堵する優しい仲間達とのんびりと片付けしながら、また撤収の準備は出来たのにダラダラとお喋りを続け帰ろうとしなかったり、帰ったかと思えば結局みんなで釣り具屋によったりと、まるで別れを惜しむかのようにグダグダとして、常に笑いながら、今日も精一杯に外遊びを楽しんだ。
魚を釣り上げる事だけが釣りの楽しみでは無く、アウトドアの一環として釣りがあり、例え魚が釣れなかったとしても自然を楽しむ。
これが私のスタイルであり、今の仲間達とは共有出来ていると感じている。
またこの豊かな大地に春を告げる魚、サクラマスが北海道へ帰ってきた。
【釣果】
サクラマス×1 59cm 2910g